Japanese
English
綜説
無痛性虚血性心疾患
Asymptomatic Ischemic Heart Disease
三山 博司
1
,
岡田 了三
2
Hiroshi Mitsuyama
1
,
Ryouzo Okada
2
1順天堂大学循環器内科
2順天堂大学心臓病理学研究室
1Division of Cardiology, Department of Interal Medicine., Juntendo University, School of Medicine
2Research Laboratory for Cardiovascular Pathology, Departmentof Internal Medicine,Juntendo University
pp.353-364
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204847
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はじめに
虚血性心疾患は大きく分けて心筋梗塞,狭心症,無痛性虚血性心疾患に分類されていたが,1979年のISFC/WHOによる新分類では表1のように更に細かく分けられた。その中では以前の無痛性虚血性心疾患の項は削られて急性心筋梗塞のHistoryの項で"時に無痛性の事がある"との注がある1)。また心不全や不整脈で発症した虚血性心疾患の中でも無痛性のものが含まれ,全く前兆のない急死例も見方によっては無痛性といえる。
虚血性心疾患の診断では,患者の症状中特に胸痛が重要なポイントであることは分類がどう変わろうと不変の真理である。狭心症は"SAVES"と表現される特徴ある胸痛および狭心痛によりほぼ70%は診断されると言われている。しかし少数ながら同程度の冠状動脈病変を持ちながら,全く無症状に経過している症例があるのも事実である。また無症状に経過しながら突然心筋梗塞を発症したり突然死を来たす症例も臨床上ときに経験する。心筋梗塞の胸痛は原則として狭心症を上回る強度で持続が長い特徴をもつが,軽い胸内圧迫感に留まる例.頸部痛,耳痛,歯痛,肩痛,上肢とくに尺側の痛み,腹痛,稀には下肢のつれる感じなどを訴える例,単なる息苦しさ・動悸だけの例,または全く症状がなく,健康診断で心電図上心筋梗塞を指摘される例など,非定型的な症状を示すこともよく経験される。
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