Japanese
English
綜説
逆行性血流量
Retrograde blood flow
秋月 哲史
1
,
James M.Downey
1
satoshi Akizuki
1
1南アラバマ大学生理学教室
1Department of Physiology, college of Medicine, University of South Alabama
pp.135-143
発行日 1985年2月15日
Published Date 1985/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204592
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冠副血行路の重要性は多くの研究者により指摘されている。冠動脈を急性閉塞しても,その閉塞冠血管灌流域のすべての心筋が梗塞とはならず1〜3),梗塞の大きさは副血行路の血流量(collateral flow,以下副血行流量と略す)により決定されるという1,4)。このため様々な方法で副血行流量の測定が試みられている。
冠動脈を結紮し,その末梢部に挿入したカニューレを通じ逆行性に流れ出る血液(retrograde blood,以下逆行性血液と略す)の酸素飽和度は動脈血のそれに等しく5,6),また非閉塞冠動脈を一時的に結紮すると,その流れが止まることが知られている5)。これらより逆行性血液は非閉塞冠動脈の血液が副血行路を経て,毛細血管床を通過せず直接流れ出るもので,その流量(retrograde flow,以下逆行性血流量と略す)は副血行流量を反映し5〜9),カニューレにより測定される末梢冠動脈圧(peripheralcoronary pressure)は副血行流量の血行動態指標の1つであるという10〜12)。1928年Anrepら13)により最初に逆行性血流量と末梢冠動脈圧が測定され,以後動物実験14〜23)でも,臨床例24〜27)でも副血行路の機能を評価するためにこれらの測定が広くおこなわれている。しかし逆行性血流量は副血行流量とほぼ一致するという報告28,29)もあるが,副血行流量を過大に評価するという成績6,30,31),また逆行性血液を採取中にも不活性ガスの洗い出しがみられることより,むしろ過小に評価するという報告32〜35)もあり,両者の関係については3者3様の意見があり興味深い分野である。
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