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肺胞レベルにおけるガス移動は拡散による受動的過程によって行なわれるとする概念は一般に受け入れられている。恒常状態下開放系ガス交換においてCO2が排出されている状況のもとでは,動脈血のCO2分圧が肺胞の気相のCO2分圧よりも高値であることは、拡散障害あるいは換気・血流比の不均等分布の存在のもとで考え得ることである(Rahnら,1964)。しかしこれとは逆に,血液相(混合静脈血あるいは動脈血)のCO2分圧が肺胞の気相のCO2分圧よりも低値であるとする文献が少なからず存在する。これらの記載は,血液相と気相との間でCO2の移動がない再呼吸の状態のみならず恒常状態下開放系においても見ることが出来る。この様な報告は決して最近にのみあるのではなく,すでに1891年Bohrによって吸入気CO2濃度が5〜10%である場合に血液相のCO2分圧と気相のCO2分圧との差(これを本稿では以下ΔPCO2と記す)が負であるとする報告がなされている。かかる結果に対する説明としては,まず肺胞気ガス組成の呼吸周期に伴う変化による,とくに運動負荷時にはこれが誇張される,動脈血のCO2分圧は時間平均であるが気相のCO2分圧は体積平均である,などが論ぜられる。しかし観察結果はこれらによってのみでは充分に説明されない(Denisonら,1969;Piiperら,1971;Jenningsら,1975)。
比較生理学的に見れば,トリの肺においては気相のCO2分圧が血液のCO2分圧よりも高く,これがHal—dane効果によることが理論的に考察され実際にも観察されている(Meyerら,1976)。サカナの鰓におけるガス交換においてもCO2の分圧較差が逆転することが報告され,これはClとHCO3−の鰓を介しての交換と関連していると推論されている(Dejours,1969)。
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