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はじめに
重症呼吸器疾患患者において,CO2蓄積により重篤な神経学的障害が起こることが注目され,CO2ナルコーシスと呼ばれている。一方,呼吸器疾患によって神経症状を呈するものにemphysematous encephalopathy(Conn,1957)1), pulmonary encephalopathy (Sw—anson, 1960)2),肺性脳症状(宮崎,1960)3),肺性脳症(冲中・三上,1962)4),l'encephalopathie respiratoire(Goulon, 1961)5),肺脳症候群(三瀬,1964)6)などいろいろな名称が与えられている。また,CO2ナルコーシスと同様の意味で,CO2 reversal, CO2 intoxication syndromeなどの名称が用いられることもあり,用語上にやや混乱がみられる。
1964年3月,第5回日本神経学会のシンポジアム"pulmonary encephalopathy"でこの問題が論じられ呼吸と循環,第12巻第9号に肺性脳症特集として発表されている。前川教授はすべての考えを包含する用語としてrespiratory encephalopathyを提唱し,笹本は肺機能不全に基づくすべての脳神経症状をpulmonary encephalopathyとし,そのうちで呼吸性アシドーシスに起因することが明らかなものをCO2ナルコーシスと呼ぶことを提唱した。これらの関係は表1のごとく整理される7)。
筆者らは慶応病院において,過去約10年間に,①高度の呼吸性アシドーシス,②意識障害,③自発呼吸減弱の3症状を呈するCO2ナルコーシス症例19例を経験したので,その臨床像および治療について報告する。症例は男性11例,女性8例で,年齢は高年者に多く,40才から83才におよんでいる。
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