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従来,イヌ,ネコ,ウサギ等の哺乳動物では呼吸中枢は橋・延髄の脳幹部にのみ存在し,そこからの律動的出力が脊髄の呼吸筋支配の運動ニューロンを駆動し,呼吸運動が生ずるとされてきた19,32,40)。従って脳幹と脊髄切り離したいわゆる脊髄動物では,かつていわれたような自発的呼吸運動31)は生じないとみなされてきた12,13,24,30)。しかし近年,脊髄動物でも特定の条件下で自発呼吸活動が生じる事が報告され注目を集めている。Cognia—leseら11)は,イヌで頸髄切断後に横隔神経から律動的な呼吸神経活動を導出記録した。この場合,呼吸促進薬(Doxapram hydrochloride)17,28)を使用しているが,数例ではそれを使用せずに自発呼吸運動を引き起こすのにも成功している。私共もネコで,頸髄上端C1レベルで全切断した脊髄ネコに呼吸促進薬を使用せずに自発呼吸運動を引き起こすのに成功した3,4)。Vialaら53,54)は最近ウサギの頸髄を全切断した標本で横隔神経の自発呼吸神経活動および四肢筋の筋神経から歩行のステッピングリズム23,27,33)を記録し,両者の脊髄内リズム発生機構9,16,47)の間に密接な関係のある事を示唆している。
このような実験結果から,脳幹のみならず脊髄レベルでも呼吸のリズム発生機構が存在する事は確実視されるに至っている。この場合,脊髄動物の自発呼吸活動を説明する為の機序としていくつかの可能性が挙げられる。(1)脊髄内に脳幹とは独立した呼吸運動のリズム発生機構が存在する8)。(2)頸髄C1切断によって延髄下端から頸髄にわたって存在する呼吸中枢の一部が脊髄内に取り残され,後に代償性活動を起こす38,42,44,52)。(3)上記の(1)(2)の組合せ。
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