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I.はじめに:超音波ドップラ法による 心内血流のイメージ化への歩み
心エコー図法の心臓病における重要さは,今日ではもはや揺ぎないものとなっており,その位置づけもほとんど固定していると云って良いであろう。その場合,心エコー図法の"無侵襲的"というメリットがきわめて大きいものである。一方,心臓病の画像診断法の1つとしての観点からみると,心エコー図法とX線心臓血管造影法との関係が問題となりうるが,これに関しても,今日ではほとんど結論が得られており,一般的には,"互いに置換的ではなくて,相補的である"というように理解されている。その理由の大きなものの1つは,心エコー図法が心内血流の直接的な映像化に弱点をもっていることである。この点に関しては,コントラスト心エコー図法の導入によって,ある程度までは心内血流の映像化は得られるし,又きわめて有用ではあるが,しかしなお臨床的には不満足なものである。なぜなら,コントラスト剤として炭酸ガスのマイクロバブルなどの注入を要するので完全に無侵襲的とはいえず,又その応用範囲も,もしカテーテル挿入がなければ,主として右心系に限られるものである。
上述のような心エコー図法の血流映像化における弱点を補うものとして現在広く,ドップラ法を断層心エコー図と一緒に記録するやり方が採用されている。これが"Doppler Echocardiography1)"と呼ばれているものである。そしてドップラ法としては,主流はパルスドップラ法であるが,最近になって連続波ドップラの必要性も強調されるようになった2)。しかし,いずれにしろ従来のDoppler Echocardiographyでは,なお"心内血流のイメージング"とはほど遠いものである。即ちパルスドップラ法では,心内の3mm径程度の小さなサンプルボリュームの血流情報(Fast Fourier Transformation,FFTによる分析記録)であり,一方連続波ドップラでは,投入ビーム線上の血流によるドップラ出力の総和がその情報である。もちろん,心内のサンプルボリューム1点の血流情報にしろ,あるいはある方向の距離分解能を持たない1線上の血流情報の総和にしろ,それらの診断的価値は高いものである。しかしこのままでは,およそ心内血流のイメージングとはいえない。
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