特集 呼吸生理の諸問題
血液のガス運搬機能
榎 泰義
1
1奈良医科大学第2生理学
pp.4-5
発行日 1980年1月15日
Published Date 1980/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203487
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1.正常人および鎌形赤血球症患者の血液酸素運搬における温度,pHの影響
上田至宏・中馬一郎(阪大・第1生理) よく知られた鎌形赤血球症は,異常ヘモグロビン(HbS)によって惹起される。赤血球の形態は酸素化状態では正常であるが,脱酸素化により鎌形状に変形する。この変化は脱酸素化によりHbS分子が赤血球内で重合を起こす(gelation)ことに起因する。この鎌形赤血球症の血液(血液SS)と正常血液(血液AA)を用い,今回いろいろなpHおよび温度で酸素親和性(P50)と赤血球内外のpH (赤血球外pH:pHe,赤血球内pH:pHi)を測定した。えられた結果を要約すると,
1)赤血球内外のpH較差(pHe-pHi=ΔpH)は血液SSの方が血液AAより大きく,酸性側でその差は拡大する。このΔpHにおける血液SS-AA間の差は,2,3—diphosphoglycerate (DPG)濃度の差では説明できない。2)血液SSのBohr係数(log P50のpH依存性)は,pHにより大きく変動し二相性を示した。
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