名著案内
—Braunwald, E., Ross, J.,Jr. and Sonnenblick, E. H.—Mechanisms of contraction of the normal and failing heart (Second Edition) (Little, Brown and Company, Boston, 1976)
中村 芳郎
1
1慶応義塾大学内科
pp.75
発行日 1979年1月15日
Published Date 1979/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203309
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心臓病臨床医にとって,心疾患の定性的診断というか解剖学的診断と生理学的診断のあるもの(主として不整脈)に関しては,その概念,診断法はおよそ明快に理解されているけれども,本来心臓の機能の目的である血液拍出機能がどの程度障害されているかを定量的に診断することになると,その概念も診断法も全く不明瞭になってしまう。1973年の改定により,なくなったNew York Heart Associationの心疾患機能分類がいまだに広く使われているのも,心臓機能をどのような方法によっていかに表現するべきかわかっていないために心機能の表現として,仕方なく使われていると解しておいてよかろう。
心臓の機能に関しては生理学的に多くの研究がなされてきたけれども,臨床家にとっては何かほど遠い所で行なわれてきた研究という感がする。わが国でも現在でも多くの心機能に関する研究が発表されているけれども,臨床に反映された研究は皆無に近く,臨床の場で利用できる概念となった研究も無に近い。そして臨床の場では常に心室に関するFrank-Starling機構による機能調節と拡張期心筋コンプライアンスの概念位で心機能を論ずれば充分と思われているようである。
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