書評
—Davidoff, L.E.and Feiring, E.H.著—Practical Neurology
吉川 政己
1
1東大冲中内科
pp.692
発行日 1956年9月20日
Published Date 1956/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200519
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- 文献概要
本書は442頁の書物で,題名よりも察せられるように実地医家を対象として書かれたものであり,他の臨床各科の同名の書物と共にシリーズをなしている。随つて緒言でも断つてあるように,一般の神経病学の成書にあるような解剖,生理についての記載は省かれている。一方著者の経験に基づいて実際の役に立つような心づかいが随所に見受けられる。例えば"神経病学でしていけないこと(Neurological Don't)"の項目を設け,脳圧亢進のある際の頭痛にほモルフイン剤を用いてはいけないことや,脳腫瘍を疑う場合の腰椎穿刺,プノイモエンセフアログラフイーについての注意を述べている。或は癲癇の章では"患者や家族から医師が屡々尋ねられる問いに対する答"の項をもうけて問答風に患者の生活様式に対する注意をのべている。
本書は十章に分けられ,簡単な序文に次いで,神経病学者の用具(第2章,診断学が述べられている),血管性障碍(3),外傷(4),腫瘍(5),炎症性疾患(6),原因不明の疾患(7),先天性乃至遺伝変性疾患(8),中毒性疾患(9),代謝性疾患(10)の各章に分けられている。第7の原因不明の疾患の章には癲癇,多発性硬化症,筋萎縮性側索硬化其の他の系統性神経筋疾患,重症筋無力症等の筋疾患,震顫麻痺其の他が含まれる。この第7章と第8章の分類がかなり大胆に感ぜられるが,出来るだけ簡素化する実際的要請に基くためであろう。又神経病学の現在の段階ではまとまつた成書でも分類の一部にはどうしても無理が伴うことは免れがたいようである。
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