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高血圧に関する新知見を網羅
Hahnemann Symposiumというシリーズ書は既発表の論文内容を原著者が要約解説を加えたものを系統的に並べたものであるので,その方面の最前線の専門家にとっては特に新しい知見がもられているわけではないが,系統的体載の上に,新旧とりまぜた重要な仕事をちりばめてあるので,本シリーズでは,いずれも,専門家にとっては知識の整理の上に役立ち,また,それぞれの方面をこれから深く学ぼうとする人にとっても便利な書物である.
高血圧症に関するHahnemann Symposiumは1959年,1961年に出版され,今回の第3回目が本書である.国際的に有名な143名の研究者が参加し,902頁,10部,99章から成る本書は,高血圧症に関するほとんどすべての問題点を網羅している.第1部の「血圧測定法と高血圧症の定義」から始まり,第2部では体液量,電解質と血圧との関係の解析,本態性高血圧症の循環動態の特徴,血管反応性の問題が述べられている.第3部の「本態性高血圧症の遺伝的,疫学的および環境的因子」では,Framingham調査の結果も要約され,一方Na代謝が交感神経系機能に影響を及ぼすことも示されている.第4部では高血圧症における心機能の変化が,第5,第6部では,高血圧症の薬物療法について述べられている.ここでは,従来の降圧剤が再検討され,さらにβ受容体遮断剤,guancydine,clonidine,prazosin等の新しい降圧剤にもふれている.第7部の「副腎性高血圧症」および第8部の「腎性高血圧症」では,高血圧症の成因に関連した多くの報告がみられる,本態性高血圧症と鉱質ステロイドホルモンとの関係は明らかではないが,aldosteroneあるいは18-OH-DOCの分泌増加または代謝異常の存在が指摘されており,またある種の遺伝性高血圧ラットにおいても,鉱質ステロイドホルモン代謝異常が認められるという.腎性昇圧機序としてreninangiotensin系は重要であるが,一方,腎髄質は抗高血圧作用を有する可能性が示唆されている.第9,第10部では高血圧症と妊娠あるいは経口避妊薬との関係,および高血圧治療上の特殊な問題として頸動脈洞神経刺激による降圧療法,内臓神経切断の影響,褐色細胞腫の治療指針等の問題が述べられている.また,二次性高血圧症の診断規準や薬物療法の実際的問題についても多くのスペースがさかれている.
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