巻頭言
冠動脈外科進歩の背景
瀬在 幸安
1
1日本大学第2外科
pp.187
発行日 1977年3月15日
Published Date 1977/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203016
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近年心臓外科の分野で最も注目されている課題として,冠動脈疾患に対する外科療法をあげることができよう。昨年アメリカでは約10万人の冠動脈手術が実施されたと言われており,この数は全心臓手術数の80%以上であり,冠動脈外科療法の有効性を卒直に理解することができる。このような増加の要因として,まず第1に直接冠血行再建術である大動脈一冠動脈バイパス手術(A-Cバイパス手術)の登場をあげることができ,しかもA-Cバイパス手術の開発と普及の原動力として,SonesやJudkinsらによって開拓された選択的冠動脈造影法と左室機能検査法があずかっていることは,広く認められている。
冠動脈の病的変化の有無と程度を知る方法として心電図は全く無力であり,冠動脈とその分枝の造影により,はじめてこれらを正確に把握できるばかりでなく,さらに冠動脈の走行や心筋への分布状態を知ることが可能である。とくにこの選択的冠動脈造影法は心筋硬塞症発作直後でも安全に施行しうることを,Mayo ClinicのBeggらが報告して以来,本法の普及に拍車がかけられ,冠動脈手術の適応にさいし必須の検査法として重きをなしている。
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