綜説
Total body buffer capacity
本田 良行
1
Yoshiyuki Honda
1
1千葉大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Chiba University School of Medicine
pp.656-665
発行日 1976年8月15日
Published Date 1976/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202932
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たとえば,図1に示すように,体液量11.4lのイヌに0.3NのHC1を156ml注入したとき,その血液pHの低下は0.3に過ぎなかった。しかし,同量の水11.4lに同じく0.3N-HClを156ml加えると,pHの低下度は,5.16にも達した15)。これを,水素イオン濃度の増加度で比較すれば,前者は約2倍,後者は約14万5千倍となる。からだは,このように,酸や塩基の侵襲に対して,水素イオン濃度が変化しないよう強力な防禦能力をもっている。このような防禦能力の尺度として,緩衝能(Buffer Capacity)が用いられ,βの記号で表わす。βは,対象とする溶液に強塩基(ΔB)または強酸(—ΔB)を加え,その溶液のpHの変化する量の割合で表わされる。
β=ΔB/ΔpH=—ΔB/—ΔpH (1)
この場合,ΔpHは,強塩基(ΔB)のときは,正の値を,強酸を負荷したときは負の値となる。したがって,βは常に正の値である。最初に緩衝能を定義したVan Slykeは,βの単位をM/pH/lで表わした。しかし,生物学的溶液を対象とする場合,これではしばしばきわめて小さい値となる。Woodbury28)はβをmM/pH/lで表わし,簡単のためslyke (sl)と呼ぶことを提唱した。
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