巻頭言
うっ血性心不全治療の多様化
安田 寿一
1
1北海道大学循環器内科
pp.655
発行日 1976年8月15日
Published Date 1976/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202931
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難治性あるいは治療抵抗性心不全の概念はあくまでも相対的なものに過ぎず,新しい治療法が確立される前と以後では治療に抵抗する心不全の病像や重症度は大きく変ってきている筈である。事実20数年前の経口利尿薬がまだ登場してなかった頃はうっ血・浮腫など症状のそろった重症心不全に接する機会が比較的に多かったように思われる。しかし最近入院してくる重症の心不全は既にジギタリスや利尿薬が使われており,改めてジギタリスを投与してもあまり効かず呼吸困難・頻脈・重篤な不整脈・四肢のチアノーゼ,四肢が冷たくなる,運動能力の低下などの低心拍出症状を示すにもかかわらず,うっ血や浮腫がそれ程著明でない,いわば慢性循環不全ともいうべき症候を示す患者をよくみるようになってきた。したがって,こういった患者の治療対策を立てることは一つの重要な研究課題と考える。
従来,心不全では心筋収縮力の減少による心臓のポンプ機能の低下が基盤にあるという観点から,先ず強心薬を投与して心機能の回復をはかるという基本方針で治療が行われていた。
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