巻頭言
CSFと呼吸—四半世紀の歴史
本田 良行
1
1千葉大学医学部生理学教室
pp.375
発行日 1976年5月15日
Published Date 1976/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202896
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ベルギーのLeusen博士が,イヌの脳室灌流液の酸塩基組成を変えて,呼吸が変化することを初めてExperi-entiaに発表したのが1950年であった。従って,脳脊髄液(CSF)と呼吸の研究も四半世紀の歳月を重ねたことになる。1975年3月西ドイツのRuhr大学で"Acid-base homeotasis of the brain extracellular fluia"のシンポジウムが開催された際に,同教授よりこの研究に至る動機を伺う機会を得た。
それによると,第2次大戦前に,ロシアからベルギーのGehnt大学に留学していた女医がいた。戦時中消息が絶えていたが,戦後音信が再開されるに及び,戦時中の仕事について情報の交換をした。彼女は,戦場でショックに陥った兵士のCSF中にKC1を注入すると非常にいいという経験を報じてきた。このことにLeusen教授は非常に興味をもったので,CSFのイオン組成を変えると中枢神経の機能にどう影響するかという一連の仕事に着手した。そして重炭酸イオンの呼吸に対する著明な影響を発見するに至った。
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