巻頭言
大気汚染と呼吸器障害,最近における検出法の進歩と応用へのすすめ
佐竹 辰夫
1
1名古屋大学医学部第2内科
pp.763
発行日 1975年9月15日
Published Date 1975/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202807
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過去十数年来,石油化学工業の増設にもとづく大気汚染の蔓延に伴い,多くの地区で呼吸器疾患患者の急増が報ぜられてきた。大気汚染と呼吸器障害の関係を究明する手段には,1)有症率,2)肺機能検査,3)死亡率(とくに乳幼児)などの調査がある。従来は主に1)が用いられた。しかし,1)では意識調査に陥りfalse positiveの入り込む危険性がある反面,障害に比例した症状が生じない限りfalse negative,すなわち誤って関係なしとする危険性をもっている。そこに客観性をもつ肺機能検査の有用性があろうが,現在までのところでは,遺憾ながら信頼度が低い結果に終っている。この理由の主なものは,用いられてきたpeak flow rateや1秒率(1秒量/肺活量)などの指標が気道狭窄の実態を反映していると単純に誤認され,「気道における病変と機能障害の相関状態」という本質的な研究を怠ってきたことにあると思われる。
しかし,最近における肺生理および病理学の進歩により,ようやく以下の諸点が明らかになってきた。
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