Japanese
English
Current Opinion
大気汚染と呼吸器疾患
Ambient Air Pollution and Respiratory Disease
中野 真規子
1
,
大前 和幸
1
Makiko Nakano
1
,
Kazuyuki Omae
1
1慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室
1Department of Preventive Medicine and Public Health, Keio University School of Medicine
pp.829-836
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101531
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日本のPM2.5の環境基準設定についての最近1年間の話題
わが国の粒子状物質の大気環境基準は,1973年に浮遊粒子状物質(suspended particulate matter;SPM,空気力学的粒子径が10μm以下の粒子状物質)(図1)1)として「1時間値の1日平均値が0.10mg/m3以下,かつ1時間値が0.20mg/m3以下」に設定されているが,2009年9月に新たに微小粒子状物質(通称PM2.5)(図2)2)の大気環境基準を「1年平均値が15μg/m3以下,かつ1日平均値が35μg/m3以下」と告示した1).PM2.5とは,空気力学的粒子径が2.5μmの粒子を50%の割合で分離できる分粒装置を用いて粒子径の大きい粒子を除去した後に採取される大気中に浮遊する粒子状物質と定義され,細気管支および肺胞到達率の高い粒子(沈着率10~50%)であることから,呼吸器や循環器疾患の増加が懸念され,国内外でその科学的知見が集積されてきた.
中央環境審議会大気環境部会微小粒子状物質環境基準専門委員会および微小粒子状物質測定法専門委員会は,米国6都市研究3,4),ACS(American Cancer Society)研究5,6),AHSMOG(Adventist Health Study on Smog)研究7),WHI研究8),Ducth研究9),ノルウェー研究10),三府県コホート研究1)などをレビューした.死亡(全死亡,心肺疾患死亡,肺がん死亡)をエンドポイントとして,単位濃度あたりのリスク比が示されている疫学知見をまとめると図3~51)であった.
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