メディチーナジャーナル 呼吸器
大気汚染と呼吸器疾患
梅田 博道
1
1東京医歯大・第二内科
pp.138
発行日 1965年1月10日
Published Date 1965/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200669
- 有料閲覧
- 文献概要
経済開発,社会開発のすすむにつれて各種の公害が発生する。公害の中でも大気汚染は一般住民に影響するので,とくに注目せざるを得ない。本年9月,札幌で開催された第4回日本胸部疾患学会においても大気汚染と呼吸器疾患というシンポジウムが北大安倍三史教授司会のもとに行なわれた。また一般演題においても,これと関連する演題がかなり多く,大気汚染は今や公衆衛生学的な問題だけでなく,臨床家にとつて重大な課題となつたことが知られる。
まず,air pollutantの分析であるが,浮遊媒じん量,大気中のSO2濃度,COガスなどが問題となる。そして,地域により汚染物質が異なることが知られている。すなわち,大気汚染には5つの型がある。(1)ピッツバーク型は主に工場排煙(石炭燃焼)によるもので,日本では宇部,北九州,尼崎など。(2)ロサンゼルス型は主に自動車の排気ガスによるもので,日本では東京,大阪の中心部,(3)ニューヨーク型は主に自動車の排気ガスと工場排煙の混合によるもので,日本では東京,大阪の工業地区,(4)ロンドン型は主に家庭,ビルディングの暖房によるもので,日本では札幌,旭川など,(5)マンチェスター型は主に工場排煙と暖房の混合によるもので,日本では室蘭,釧路などが該当する。ところで,労研の佐野辰雄氏は大気汚染地区と非汚染地区の犬の肺を比較し,大気汚染地区の犬の肺では粉じん沈着量のいちじるしく多いことを報告した。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.