呼と循ゼミナール
不整脈の新しい見方(2)—A-V junctional rhythm
比江嶋 一昌
1
1東京医科歯科大学第1内科
pp.446
発行日 1975年5月15日
Published Date 1975/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202768
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以前,A-V nodal rhythmの刺激生成場所は,文字通り房室結節であり,しかも陰性P波とQRSとの位置関係から,房室結節の上・中・下のいずれかの部分にあると考えられていた。しかし,房室伝導の正方向と逆方向との伝導速度が等しいならば,この考え方は理解されようが,実際はそんなに単純なものではない(ふつう,逆伝導の方がおそい)。
この概念は,約60年前行なわれたZahnの実験に基づくものである。彼は特別に考案したthermode(熱導子)を,拍動している右心耳へ挿入し,選択的に次の場所へ置いた。すなわち,冠静脈洞口(彼は上部房室結節と呼んだ),三尖弁中隔尖に沿った心房のある部位(中部房室結節と呼んだ)およびその遠位の場所(Zahn自身,この場所はおそらくヒス束上にあると考えたが,彼は下部房室結節と呼んだ)である。熱導子を暖めることにより,彼は特殊なリズムを作りえたとし,そのさい心房収縮と心室収縮との間隔(As-Vs間隔)を機械的に記録した。つまり,"上部"房室結節を暖めると,As-Vs間隔は0かわずかに+,"下部"房室結節を暖めると,その間隔は−となった。また,同じ場所を冷やしても,同様な成績が得られた。
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