呼と循ゼミナール
アイゼンメンジャー症候群・妊娠・DIC
小出 直
1
1東京大学第2内科
pp.430
発行日 1975年5月15日
Published Date 1975/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202765
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アイゼンメンジャー症候群の患者では,妊娠末期から産褥期にかけての死亡の多いことが知られている。Crawfordらが従来の英語文献中の報告例を集計した結果では,37例の66回の妊娠中8例(21.6%)が死亡し,児の死亡も27%にのぼった1)。
本症患者が分娩前後に死亡し易い理由として,従来は,(1)妊娠に伴い,殊に分娩時にピークに達する血行力学的な心臓の負担増加,あるいは(2)妊娠中毒症で高血圧のある例では,分娩後の急速な血圧正常化に伴う右左短絡の増加,などが考えられていた。しかし,(1)は心疾患患者一般に共通した要因であるし,(2)はファロー四徴症など他のチアノーゼ性心疾患と本症との差異を説明できない。例えばJonesらの集計では,アイゼンメンジャー症候群患者の母体死亡率が37例中10例(27%)であるのに対して,ファロー四徴症患者では71例中3例(42%)にすぎない2)。他方,心腔内短絡のない原発性肺高血圧症では,アイゼンメンジャー症候群よりも更に高い母体死亡率が報告されている3)。しかも,これらの疾患の死亡時の状況は,急死,ないしそれに近い急激な悪化例が多い2)3)。従って従来の説明が不充分なことは明らかであるが,それでは,どのような説明が妥当であろうか。
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