Proximal junctional kyphosisの治療

Treatment of Proximal Junctional Kyphosis

はじめに

　人口の高齢化に伴い，脊柱変形による痛みや体幹変形のために外科的治療が必要となる患者は世界的に増加している．脊柱変形の外科的治療の目的は，良好な体幹バランスを得ることと，十分な神経の除圧を行うこと，そして骨癒合を得ることである．成人脊柱変形に対する矯正固定術の合併症発生率は約30％に達し，2年以内に再手術が必要となる患者の割合は約20％と報告されている^{9,16,19,20）}．

　Proximal junctional kyphosis（PJK：近位隣接椎間後弯変形）は特発性側弯症やScheuermann変形に対するHarringtonロッドを用いた後方矯正固定術後に発生するX線上の術後合併症として報告され，近年成人脊柱変形に対する矯正固定術後に高率に発生する術後合併症として注目されている^9）．PJKの中でもproximal junctional failure（PJF：近位隣接椎間後弯障害）は，背部の痛みのみならず，ときに脊髄麻痺などの重篤な症状を呈するため，成人脊柱変形の術後合併症として深刻な問題となっている^3,6）．本稿ではPJKとPJFの定義，特徴，危険因子，予防と治療について述べる．