呼と循ゼミナール
IHSSは遺伝性疾患か続発性症候群か?
小出 直
1
1東京大学第2内科
pp.262
発行日 1975年3月15日
Published Date 1975/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202740
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いわゆるIHSS (idiopathic hypertrophic subaorticstenosis,特発性大動脈弁下狭窄)の病因は不明であるが,家族性発症例の多いこと,患者は男女ほぼ同数であること,発症年齢が乳幼児期から老人まで広般に分布していることなどから,常染色体性優性遺伝をする形質が後天的に発現するものと考える学者が多い。ただし染色体の形態学的異常は発見されていない。他方,IHSSに特徴的な心室中隔上部の肥厚部には,特異な組織学的所見を呈する異常心筋細胞が存在する。この部の心筋細胞は排列が乱れ,個々の細胞は単なる肥大だけではなく不整な形状を呈し,細胞内の微細構造にも種々の異常がある。これらの異常は多くの点で胎生期の心筋組織に似ている。高血圧や大動脈弁狭窄症に伴なう心肥大では,普通はこのような異常組織は認められない。そこで最近では,この異常心筋組織の存在こそが,遺伝子によって規定された形質の本質的な表現であろうと想像されている。
IHSS,あるいはこれと区別しがたい病態は他の疾患に合併して発見されることがある。
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