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米国の医療施設を見学する目的は,それぞれの時代を背景にして移り変わってきた.病棟を中心とした患者の療養環境,搬送機器を中心としたシステマティックな物品供給部門,LDR(Labor, Delivery and Recovery)や日常生活訓練の場としての Easy Street,米国特有のシステムでもあるドクターズオフィス,日帰り手術や通院治療の施設等々,数え上げると切りがないほど,わが国の医療施設は,多くの範を米国に求めてきた.しかし,診療報酬制度や民間中心の保険制度が,わが国の場合と大きな隔たりがあることから,ある面,どこか距離をおいた評価を行っていたことも事実で,ここ数年,福祉施設への眼差しの強さも手伝って,こうした医療施設の視察先は,米国から欧州へと移り変わっていたようにも思える.
しかし,そうしたわが国の医療施設関係者の興味の移り変わりを他所に,米国では新たな動きが広がっていた.それが IHN(Integrated Healthcare Network )であり,松山幸弘氏((株)富士通総研)の活動によりわが国でも広く知られるようになったシステムである.これは,ある医療圏の中で複数の医療機関や福祉施設,これと関連する各種の保険関連団体,医療福祉関連サービス供給企業,医薬品・医療材料などの提供企業,エネルギー供給企業,情報関連企業などが経営統合し,ネットワークを形成することで,地域住民が求める医療や介護サービスを計画的かつ効率的に提供しようとする試みである.わが国では今,赤字に苦しむ自治体などの公的病院も多く,またこれらが民間に売却されることも少なくないが,こうした状況を変革してゆく一つの策として,IHN は非常に参考になるシステムではないか,と考えている.
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