巻頭言
肥大心の収縮性
河合 忠一
1
1京都大学医学部内科第3講座
pp.199
発行日 1975年3月15日
Published Date 1975/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202730
- 有料閲覧
- 文献概要
心肥大は心臓負荷に対する心筋の重要な代償機構と理解されており,負荷による心仕事量の増大は肥大心筋によって達成される。拡張に見合う肥大を伴う肥大型心筋症が,拡張が主で肥大の乏しいうっ血型心筋症に比し遙かに代償期間も長く予後も良好である事実は心肥大の代償的役割をよく物語っている。しかし心肥大の代償的性格はいつまでも続くものではない。心臓負荷が持続すれば肥大心といえども不可逆的な心不全に陥る。この意味で肥大心を正常心と不全心の中間位に位置づけすることもできよう。とすれば肥大心は代償的性格と同時に収縮不全へのなんらかの徴候を宿しているかもしれない。あるいは一見変りない肥大心でありながら,ある時期に収縮不全へ移行するのであれば,その移行期を探知することは治療の実際からも重要といわなければならない。ここに肥大心の収縮性測定の臨床的意義が存在するといえよう。
従来,心収縮性に関しては収縮の大きさや速さを表現するいくつかの優れた指標が発表され,それぞれ問題を含みながらも臨床面に応用されるに至っている。しかしその多くは正常心または不全心についてなされた研究を基に発展したものでヒト肥大心における心収縮性を取り上げた論文は意外に少ない。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.