呼と循ゼミナール
原因不明の肺水腫について(3)—Wet lung, shock lung, adult respiratory distress syndromeの成因をめぐって
原沢 道美
1
1東京大学医学部老人科
pp.26
発行日 1975年1月15日
Published Date 1975/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202704
- 有料閲覧
- 文献概要
臨床的に肺水腫の病像を示すが,既述した高地肺水腫やヘロイン肺水腫と異なり,O2投与に反応し難く,病理学的にうっ血性無気肺といわれている病変を呈する一連の病態が,いくつかの異なった名称で報告されている。最初に報告されたのはwet lungで,これは第二次大戦時,戦闘中にうけた出血性,外傷性ショックが回復しつつある間に,思いがけずに発症する重症の呼吸障害に対して名づけられたものである。最近のベトナム戦争に至って,戦場で循環障害を治療する機会が増すと共に,同様の現象が多くのものにより観察され,shock lungまたはDeNang lungと名前を変えて再び登場した。その典型例の経過をみると,戦場において出血や低血圧が成功裡に治療され,患者が基地病院に移送されて回復期にある間に,何の前駆症状なしに呼吸困難や多呼吸が出現し,間もなくチアノーゼが進行して重篤な呼吸不全に移行する。胸部X線像では,初め両肺にまだらな陰影が散布するが,やがてそれらは肺底部に融合するようになる。肺機能検査上肺コンプライアンスの著明な低下を認め,動脈血ガス所見にはハイポキシアおよびハイポカプニアの合併がみられる。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.