呼と循ゼミナール
原因不明の肺水腫について(2)—ヘロイン肺水腫の成因をめぐって
原沢 道美
1
1東京大学医学部老人科
pp.896
発行日 1974年12月15日
Published Date 1974/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202691
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既に100年も前から,ヘロインによって肺水腫の起こることが知られていたが,アメリカにおいては麻薬患者の増加と共に,近年にわかに注目されるようになり,ヘロイン肺水腫は大きな市民病院などではもはや日常的な問題となってきている。
麻薬中毒者の特性から昏睡状態で救急入院し,初めて診療の対象となることが多いが,その場合約50%近くが肺水腫を合併し,死亡例は肺水腫が死因となることから,肺水腫はヘロイン中毒の本質的病変と考えられる。入院時ほとんどの患者は呼吸が抑制されており,なかには呼吸数が2/毎分位にまで減少していることが少なくない。稀には浅促呼吸をとることもある。脈拍は普通整で,また血圧も正常範囲のことが多い。体温は平熱のことが多いが,肺水腫や肺炎を合併すると上昇する。多くの例に縮瞳をみるが,その他神経学的に異常所見は認められない。チアノーゼがほとんどの例にみられる。胸部では約半数近くにラ音を聴診するが,心臓には異常のないことが多い。腹部,四肢に特別な変化はない。
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