呼と循ゼミナール
原因不明の肺水腫について(1)—高地肺水腫の成因をめぐって
原沢 道美
1
1東京大学医学部老人科
pp.820
発行日 1974年11月15日
Published Date 1974/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202681
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肺水腫は肺における異常な血管外水分貯溜状態と定義され,肺毛細管圧の上昇,肺毛細管の透過性亢進,血漿膠質浸透圧の低下,表面活性物質の減少などが単独に,またはそのいくつかが合併して出現し,それがリンパ管性ドレナージに打勝った場合に発症するとされている。しかし臨床的にみる肺水腫は,有毒ガスの吸入などにより肺胞・毛細管膜の傷害がその成因となることもあるが,そのほとんどは静脈性肺高血圧を介する肺毛細管圧の上昇に基づくものである。ところが,そのような機序によらず,しかもなおその成因の細部が不明な肺水腫がいくつか存在する。先ず高地肺水腫の成因について考えてみたい。
健康人が約3,000m以上の高地に急速に到達すると,約5%の頻度で,数時間から数日以内に肺水腫が出現する。このような現象は,高地住民が2週間以上平地に滞在し,高地に帰ってきた時にもみられる。臨床症状は普通の肺水腫の場合と何ら変わるところはない。発症時に心カテーテル法を行った成績をみると,いずれも肺動脈圧の上昇,心拍出量の減少,動脈血O2飽和度の減少が認められているが,左室拡張期・左心房・肺動脈wedge圧などは正常範囲内にある。報告されている肺動脈圧値には大きな差異がみられ,22から117mmHgにわたっている。肺水腫が恢復するにつれ,肺動脈圧値の下降,心拍出量の増加および動脈血02飽和度の改善がみられる。
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