呼と循ゼミナール
僧幅弁狭窄における縮流現象
谷口 興一
1
1東京医科歯科大学第2内科
pp.298
発行日 1974年4月15日
Published Date 1974/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202613
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1951年,Gorlin, RはTorricelliの定理に,Bernoulliの法則を応用して僧帽弁狭窄の弁口面積算定式を考案し,現在広く臨床に応用されている。その後Gorlinの式を修正するような算定式が二,三報告されているが,まだ完璧なものはないようである。第36回日本循環器学会総会,血行動態シンポジウム(司会,岐大早瀬教授)において,筆者は管路orificeの立場から,僧帽弁狭窄の弁口における縮流発生の有無について,臨床例およびモデル実験の成績を報告した(図1)。弁口面積Aは,
(式省略)
で求められる。心拍出量Q,心拍数n,拡張期流入時間TD,速度係数Cu,縮流係数Cc,位置y1,y2,圧較差P2—P1,重力加速度g,血液密度ρ,開口比m=A/A1=(Da/D1)2,流量係数C。もしCorlinが考えたように,僧帽弁狭窄に縮流が生ずるならば,流量係数が常に1より小さくなければならない。しかしながら筆者の求めた成績では症例の51%において,流量係数Cが1より大であった。つまり僧帽弁狭窄症の約半分は縮流が発生しないということになる。流体の流れにおいて狭窄部があると,上流側(僧帽弁狭窄では左房)の圧上昇,下流側(左室)圧下降,つまり圧力損失を特徴とする縮流現象で一応は説明できるが,血流のエネルギー損失は弁口の大きさ(弁口面積)のみによって決まるものではない。
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