呼と循ゼミナール
心室拡張終末期圧
中村 芳郎
1
1慶応義塾大学医学部内科
pp.237
発行日 1974年3月15日
Published Date 1974/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202605
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心室拡張終末期圧は心室機能曲線を考える場合,心室の拡張終末期における心筋長の指標,または拡張終末期容量,拡張終末期張力の指標として用いられている。その上昇は,通常心不全を意味すると考えられる。
ところで,現実に心室拡張終末期圧の測定はどのようにして可能であるかとなると,まずは心室内圧記録曲線を前にして困惑を感じたことのない研究者は少いに違いない。左室内圧曲線と右室のそれを比較すれば,拡張終末期圧のとり方は右室で特にむずかしいことが多い。これは,左腔内圧記録装置に原因があることもたしかである。カテーテルをつけたために体外におかれた圧記録装置の周波数特性の下降はしばしば論じられてきたし,カテーテルが体内に入ってコンプライアンスを上降させることも注意されているけれども,右室内圧を記録する際にはカテーテルが静脈に入った所から右室に入る所まで外部から加わる圧は静脈圧で右室収縮期圧より大部低いのに対し,逆行カテーテルで左室内圧を測定する際には,カテーテルの大部分が周囲から測定しようとする圧とほぼ同じ,またははるかに高い(拡張期)圧でつつまれているので逆行カテーテルによる左室内圧の方が歪みにくいという考え方は見たことがない。おそらくこの考え方は正しく,右室内圧の方が歪みやすいと思われる。第2に右室が回転楕円体に近い左室にはりついたような形であり,カテーテルの尖端が心室壁にぶつかりやすい。
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