呼と循ゼミナール
心室拡張性
友田 春夫
1
1東海大学医学部内科
pp.712
発行日 1976年8月15日
Published Date 1976/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202942
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前回述べた心筋収縮性と関連して,心筋伸展性あるいは心室拡張性という問題が注目されつつある。剔出心筋を用いたin vitroの実験では,心筋を受動的に伸展させた場合に生ずる張力と心筋の長さとの間には指数関数関係が成立し,剔出心臓を用いた左室内腔容積を変化させた場合の内圧(P)と容積(V)との間にも同じ関係,すなわちP=a+bec・v (a,b,cは定数)なる式が成立することが示されている1)。つまり完全弾性体ではない心筋においてはHookの法則は成立せず,ある程度以上の伸展に対しては張力はexponentialに増加するというわけである。このような実験成績に基づき,臨床例の左室拡張性(distensibility, compliance)を示す指数を求めることはかなり困難ではあるが,一般には前述のP=a+bec・vなる式の定数に相当するもの,すなわちexponential curveの勾配がcomplianceを表わすとされる1)。
Gaaschら2)は臨床例における左室圧(P),容積(V)の関係をP=b・ek・vとし, b定数を動物実験の成績に基づき0.43と一応仮定し,k定数を求めている。
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