呼と循ゼミナール
Vmax臨床利用のpitfall
中村 芳郎
1
1慶応義塾大学医学部内科
pp.52
発行日 1974年1月15日
Published Date 1974/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202580
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臨床的に心筋収縮性の評価がどれほどの重要性があるかの解答は不十分にしかされていないが,現実にVmaxと称される無負荷状態での心筋の最大短縮速度を測定しようとする試みは,一種のブームにあった。理論的にはすでに数多くの論文に述べられたように,心筋の収縮力を変化させる収縮直前の心筋長とは別の,すなわち,heterometric regulationまたはStarling効果とは別の変力作用を分離して測定するために,Vmaxが有用な指標であることは理解される。ところが,臨床的な測定となると種々の問題が存在している点に気がつかなければいけない。
具体的に臨床例でVmaxを測定することになると,Hugenholtzら1)の方法を用いるか,Masonら2)の方法を用いるのが普通であり,特に後者は簡単なこともあって容易に手を出しやすい。これはVCE=dP/dt/KPの式を使ってcontractile elementの収縮速度を計算し,心内圧との関係の図を作り,心内圧0の点のVCEを想定してこれをVmaxとするのであるが,その方法上いくつかの問題がある。まずdP/dtが正確であることが大切である。心室内圧の微分曲線がどれ程の正確さをもっているかていねいに多くの論文の図を見れば,容易にそのあやうげなことに気がつくであろう。心室内圧とその微分曲線を5msec間隔で同時期の値を読むので,微分の過程で位相のズレが生じていると困るのは当然のことである。
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