日常診療のOne Point Advice
胸部X線写真のpitfall
高田 佳木
1,2
1兵庫県立成人病センター放射線科
2兵庫県立成人病センター呼吸器科
pp.767
発行日 1992年9月15日
Published Date 1992/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900560
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胸部単純背腹撮影は,肺癌のみならず呼吸器疾患の画像診断の最初に行われる検査であり,日常最も多く行われ,接する機会の多い検査です.しかし,肺を見る目的であるにもかかわらず,肺の全域を通常のX線フィルムに写すことは大変難しいことと言えます.その理由は,胸郭内にある肺は皮膚,筋肉,肋骨,脊椎に囲まれ,縦隔には心臓,大血管があり,肺という大部分が空気である組織と,骨,心大血管などの組織との間のX線吸収率に大きな差があるためです.このため骨,心大血管に重なった肺は大変見にくくなります.このX線吸収率の差を相対的に少なくして,骨,心大血管に重なる肺を透過して見るために,肺癌診断のための胸部X線写真は,130~150Kvpの高圧撮影が必要とされるのです.高圧撮影ではcontrastが低下するため,淡い陰影は見にくくなりますが,胸部単純撮影で要求される異常陰影を指摘するという点では容易となります.
胸部X線写真読影の際のpitfallは,心大血管などの縦隔に重なった部分,および横隔膜のドームの下側にも肺があることを,ともすれば忘れてしまい,いわゆる肺野のみに目が行きがちになることです.その原因として読影力不足以外にも,X線写真の撮影条件が不適当,多くはunderであるため重なった部分が描出されていないことがあげられます.underなX線写真では,どんなに読影力があっても,写っていないものを読影することはできません.
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