Japanese
English
Bedside Teaching
解離性大動脈瘤
Dissecting Aneurysm
日野原 重明
1
Shigeaki Hinohara
1
1聖路加国際病院内科
1Internal Medicine, St. Luke's International Hospital
pp.235-242
発行日 1972年3月15日
Published Date 1972/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202363
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解離性大動脈瘤(dissecting aneurysm)は,急死の原因となる疾患であるとともに,学問的にも興味の深い病気として臨床医の関心がもたれてきたが,これは長い間,きわめてまれな疾患と考えられてきたものである。ところが最近の診断学の進歩や病理解剖の普及により,本疾患は決してまれではないこと,また必ずしも激痛のごとき症状をもって始まらず,時には慢性の経過をとるものがあること,内科的・外科的療法の進歩により死を免れるものが次第に増しつつあるという点に,臨床家の関心が最近ますすま高まってきた病気と考えられる。
しかし,本疾患は今日なお心筋梗塞症,脳卒中,急性腹症などと誤診されることが少なくない。著者自身が1953年から今日まで治療してきた日本人の解離性大動脈患者は,28例(男19名,女9名)にのぼっている。また,1967年までの14年間の聖路加国際病院における総剖検数1150例中,剖検にて本症であると確証されたものの頻度は1.33%(20歳以上の剖検999例中1.5%)である。これは諸外国のいずれの病院の死亡剖検例中の頻度よりも高いことを,著者はすでにアジア心臓病学会において発表した1)(表1)。なお,この数は急死した東京監察医務院や,外国でのcoroner's cases中の頻度よりも当然低いが,他のいずれの病院入院例の報告よりも高いことは,著者ら2)が本症の診断に関心が深かったことも幾分関与しているかもしれない。
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