Japanese
English
講座
僧帽弁動態とその生理学的意義
Mitral Valve Movement and Its Physiological Signicance
田中 元直
1
,
寺沢 良夫
1
Motonao Tanaka
1
,
Yoshio Terasawa
1
1東北大学抗酸菌病研究所内科
1Department of Internal Medicine, The Research Institute for Tuberculosis and Leprosy
pp.731-739
発行日 1971年9月15日
Published Date 1971/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202302
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
弁機能の良否は心臓の本質的役割であるポンプ作用の効率を左右し,循環動態への影響もきわめて大きいところから,弁機能に関する研究の歴史は古く(15世紀の終り頃から散見されるといわれる1)),解剖学的,あるいは生理学的な立場から多くの研究がみられる。しかし,弁の動態および機能に関する研究の多くは動物の摘出心あるいは露出心を用いたものでRushmer2)3)も指摘している如く変形された状態のものであることは否定できず,このまま生体に適用するには問題がある。他方臨床的には,リウマチ性弁膜症を始めとした弁膜疾患は心疾患の中でも比較的多い疾患であるところから,外科的治療法の導入が進められ交連切開術から,人工弁置換による根治的手術が行なわれるようになった。それに伴い,臨床のレベルにおいて,弁機能の良否の詳細な判定が要求されるようになり,効率のよい人工弁の作成のためにも生理的状態における弁の動態および機能についての資料を必要とするようになっている。かかる必要性から,cine—angiocardiographyを始めとするX線法による研究が活発に行なわれるようになった4)〜9)。しかしX線の物理学的性質に起因する制約から詳細な弁動態解析法としては限界があり4)5),ヒトの常態における弁動態については不明な点が多く,かつ,動態の生理学的意義についてもなお見解が一致していない。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.