巻頭言
ショック肺症候群
鈴木 千賀志
1
1東北大学抗酸菌病研究所
pp.451
発行日 1971年6月15日
Published Date 1971/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202268
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第二次世界大戦後ショックの概念および治療が確立されたが,ベトナム戦争において非胸部外傷によって出血性ショックに陥った患者がショック状態の回復に成功したにもかかわらず,その後続発する肺合併症(呼吸不全)によって死亡するいくつかの報告例があらわれ,ショック肺またはショック肺症候群と称され,関心が寄せられるようになり,わが国でも阪大特殊救急部の桂田菊嗣博士によりショック肺に該当する数例が報告され,注目を引いている。
ショック肺に関するこれまでの報告を総合してその病因,病像,病態等を簡単に紹介すると,ショック肺にみられる臨床上の病態生理は,第1に進行性の高度のPao2, Sao2の低下とA-aDo2の増大であり,高濃度の酸素を吸入させてもPao2上昇は軽度であり,第2に肺コンプライアンスの低下と生理的死腔の増加がみられ,第3にショック直後の代謝性acidosisの時から呼吸性alkalosisが持続することが多いが,死亡直前には心拍出量の減少と相俟って異常なhypercapneaが進行する症例がみられ,第4に肺循環動態の面では肺血管抵抗の増大,肺動脈圧の上昇,左房圧の低下,肺血流量の減少などが挙げられる。
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