巻頭言
気管支喘息の死因とその治療上の問題点
光井 庄太郎
1
1岩手医科大学医学部内科
pp.945
発行日 1970年11月15日
Published Date 1970/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202200
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従来より気管支喘息患者の大多数は天寿を全うするといわれてきたが,最近英国およびオーストラリヤにおいて喘息死亡者の増加が報告され,厚生省人口動態統計より本邦の喘息死亡率をみても乳幼児と老年者を除けば増加のきざしが明らかである。喘息死亡者増加の原因については十分検討されねばならない。
喘息死亡者346例の死因を分類すると,292例が発作時に死亡し,その70%は発作そのもののために死亡している。この事実は重症発作の処置が生命を守るうえにいかに重要であるかを物語るものである。定型的な発作死の剖検例では,特有な病理学的所見として気管支の痙縮像(気管支平滑筋の肥大・攣縮,気管支粘膜のひだ状隆起,それらによる気管支内腔の狭窄)と気管支の粘液産生亢進像(気管支粘液腺の肥大・分泌亢進,気管支上皮の盃細胞様化および脱落,気管支腔の粘液栓)が観察される。これらの所見は症例により,同一症例でも気管支の部位により一様ではないが,両両あいまって気管支閉塞,すなわち窒息死の主因をなすものと断定できる。
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