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はじめに
従来心臓カテーテル法を行なうには内腔のあるカテーテルを心血管内に挿入して採血,圧測定を行ない,血液の酸素含有量または酸素飽和度をVan Slyke法,cuvette oximeter等で測定するのが標準的とされてきた。Van Slyke法はかなりの採血量を要するため小児の検査には不利であり,ガス分析には長時間を要する上,かなりの熟練者が行なったものでないと測定結果が信頼し難い。また検査時間自体も長引くためその間に患者の状態が変化してデーターの解釈を誤まることもある。さらに得られる値はある部分での血液酸素含有量の平均値であり,心拍動,呼吸等に伴なう変化は捉えることができない。cuvette oximeterを使用すれば採血量,検査時間等はかなり節約できるが,やはり採血時の平均値しか得られないことはVan Slyke法と同様である。
そこで心臓カテーテル法に伴なうこれらの欠点を解決するものとして,1962年Polanyiら1)はfiberoptics(線維光学系)を生体の血管内に挿入して光を送り,血液の反射光により酸素飽和度を測定する方法を考案し,その後多くの研究者2)〜5)により基礎的研究,装置の改良,臨床的応用などが報告されてきているが,臨床上の普及は意外に遅く未だに手軽に使用できる実用機の完成を見ていないのが現状である。諸外国における成績および本法の基礎的な研究については本誌第16巻第12号の"装置と方法"欄に中村ら5)によって紹介されているので参照されたい。著者らは独自にfiberoptic oximeterの開発を進めていたが,1969年に試作第一号機についての経験を報告して以来,装置の改良,動物実験を重ね,1969年日本胸部外科学会総会,1970年日本循環器学会総会で発表したように臨床例28例に使用して満足すべき結果を得たので,装置の概要および臨床データーについて述べると共に,今後の問題点を考えてみたい。
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