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はじめに
多くの自然科学的事象のように,静脈波観察の歴史も,ずいぶん古くからある。Alkmaion (約500B.C.)は,血液の充満した脈管と空虚な脈管の区別をしたと伝えられ27),Aristoteles (384—322 B.C.)も,心室収縮と静脈帰流の過程を述べたといわれる6)。Valsalva (1666—1723)およびHurlter (1794)は,イヌの頸静脈の拍動を述べている1)2)6)。しかし,ヒトでは1740年,Lancisiが三尖弁閉鎖不全症例において,"外頸静脈の縮期性動揺"(Lancisi症候)として,静脈拍動を記載したのが,静脈波の最初といわれる8)9)。歴史的に有名なのはWedemeyerの実験で,氏は,1828年,馬の頸静脈にカテーテルを挿入し,心房弛期の間に,カテーテルに接続したガラス管内の着色液が上下するのを観察した6)9)。1883年,Riegelは"陽性および陰性静脈波"を観察し,静脈波が圧脈波ではなく,容積脈波であること,ならびに静脈波が心活動のおのおのの相に依存し,したがって,心に至る静脈血流の促進,あるいは,阻止に基づくものであろうと述べた2)。Wenckebachも同様な見解を強調している2)。近年,臨床特に心疾患の診断に,静脈波の価値を確立しのはMackenzieおよびWoodである9)28)。
静脈波を静脈における拍動と定義するなら,それは身体各所,少なくとも頸部,肝および肺静脈の拍動を含むべきである。また例外的にせよ,静脈波が前腕,手および下肢にみられることがある5)。 しかし,従来から静脈波は,頸部における静脈拍動を意味するものと理解され13),そして,普通,それは右内頸静脈球部にみられる拍動を意味する。
静脈波は頸静脈における容積,圧,速度の変化から生じる19)。その発生には,種々の血行学的因子が関係している。しかし,臨床的な観点からは原理的に26), 1.静脈内血液の流れにたいして伝播してくる心房充 えいの変化
2.近傍にある動脈拍動の伝播
を主因と考えてよいであろう。
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