巻頭言
心臓外科"雑感"
林 久恵
1
1東京女子医科大学外科
pp.123
発行日 1970年2月15日
Published Date 1970/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202114
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我が国の過去20年間における心臓外科の進歩は著しい。この間,これにたずさわったものには嶮しい年月であったことであろう。確立された技術はいとも簡単に修得できるようになっていて,おそらく過去の苦労は不思議なことであり,また話を聞いても了解できぬことであろう。しかしながら,複雑心奇形や冠血管外科治療については今後のもののようである。神々の造った正常心臓はいかにも型の上でも,機能の上でも,人の生命を保つのに都合よくできており,これをよく知って修復しなければ失敗に終ってしまうと同時に,一寸したアイディアが,これを克服し,前進することができるので,突拍子もないアイディアも全く無視することはできない。そしてこの提供者は名医よりも却って若い方々でありましょう。若い人に大いに期待をかけたい。
さて難問の一つの冠血管外科をとりあげてみると,心筋内に網の目の如くある冠血管の血流を増すことによって,虚血部を改善することができると考えているが,この方法に,もともとの血管の血流を増す方法と,他から血管をもってくる方法が考えられている(すでに周知の事柄なので割愛する)。これらの疾患を有する患者は,虚血のため狭心症発作に悩まされながら生活をしており,その為,その人の能力を充分発揮できない。そして我々が従来考えていた高齢者より遙かに若年者の多いことは,当研究所のCCUの経験より知ることができた。我が国の生活様式の変化によって変ってきたものかどうかは判然としない。
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