Bedside Teaching
Subclavian Steal Syndrome
関 清
1
Kiyoshi Seki
1
1東邦大学医学部第1内科学教室
11st Department of Internal Medicine, Toho University, School of Medicine
pp.991-995
発行日 1969年11月15日
Published Date 1969/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202090
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.概念,命名,歴史
これには今までのところ適当な邦語訳がないようである。この言葉からその現象ないし本態をちよっと思い浮べにくいようでもあるが,本症候群は簡単にいえば,椎骨動脈基始部より中枢側において,鎖骨下動脈または腕頭動脈に狭窄ないし閉塞があり,その結果その椎骨動脈内に逆流が起こり,"その末梢鎖骨下動脈が脳循環系から血液を盗みとる—steal—ために起こる症候群1)"で,臨床的には脳および一側上肢の虚血症状を呈するもの,ということになる(図1)2)。なんとも巧い言い廻しで,英語の表現力の豊かさに感心する。
反覆性の,かつ一過性の脳の限局性機能障害は,これまで頸動脈ないし椎骨,脳底動脈の循環不全による一過性脳虚血の症状として,これらの動脈の硬化,炎症,塞栓,圧迫,攣縮などによる狭窄ないし閉塞,全身血圧の低下,心拍出量の減少,血液粘性の変化,貧血,体位の変動などが原因とされてきた3,4)。このように,脳や一側上肢の一過性虚血現象は,本症候群におけるような,鎖骨下動脈の特殊な部位での狭窄ないし閉塞でなくても起こりうるから,本症候群が概念として確立されたのは,頸部や頭部の血管造影が容易に行なわれるようになった比較的最近のことに属する。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.