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はじめに 心房機能に関する研究は,すでにWilliam Harvey1)にその端を発し,その後多くの基礎的,臨床的な研究がなされてきた。とくに最近は,エレクトロニクスの開発により,心房細動に対する除細動が,安全かつ,容易に行なわれるようになり,心房細動に関する関心が高まってきたことや2)〜7),また,完全房室ブロックに対して,人工的なペースメーカーが臨床的に用いられるようになり8)9),心房収縮自体による流入量を有効にするため,心房収縮と同調するような,心室よりの刺激発生が望まれる点などから,心房機能に関する興味が一段と高まってきている。
心房の血行力学的な現象は,心室のそれと比較して,かなり複雑である。心室は例えば等容収縮期より駆出期の間は,完全な閉鎖腔であるが,心房は常に静脈系に開放しているので,心房収縮時においても,完全な閉鎖腔にならない。しかも,心房の循環諸量の計測方法に多くの制約が残されており,このことが,より一層心房のもつ血行力学的な意義を不明瞭なものにしていると思われる。なかでも,心房圧波形が,その記録部位により,かなりの変動を示す点や,beat to beatによる房室血流量の変動が直接には測定できずに,心室よりの心拍出最で代用せざるをえない点などは,心房機能の解析上,大きなマイナスとなっている。したがって,一般的に行なわれている心房機能の血行力学的な解析方法としては,1)心房収縮の心室収縮に対するタイミングをいろいろに変えたり,心房収縮力を変えたりして,それによる心室の循環諸量の変化を調べたり,2)心房細動における除細動前後の循環諸量の変化を比較したり,3)またin vitroで心房収縮力をいろいろな条件下で直接に計測し,それより帰納的にin vivoでの心房機能の推測を行なう方法などがある10)11)。
そこで本稿では,血行力学的な面からみた心房機能をとりあげ,主として左房機能に焦点を合わせ,その機能を"reservoir"としての心房機能と"booster-pump"としての心房機能とに大別にして考察をすすめ,最後に項を新ため,心房機能不全の一つのパダーンとして心房細動をとりあげ,最近の知見を交えつつふり返ってみた。
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