Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Adrenaline, noradrenalineが交感神経刺激剤であることは,以前から認められていることであるが,交感神経にα,β受容体の二種の受容体があるということが,わが国で一般に知られるようになったのは,そう古いことではない。というのは,α,β受容体説を発表したのは,今から20年前の1948年,米国ジョージア医科大学薬理学教授R.P. Ahlquistであり1),それ以来,この仮設は米国の薬理学書には記載されていたけれども,わが国では一部に紹介されてはいたが,ほとんど無視されていた。しかし最近propranolol (inderal)がわが国に輸入されるようになって,にわかに注目されるようになり,現在では一種の流行にさえなっている。しかしヨーロッパにおいても,このα,β受容体説はあまり用いられていなかったようで,β受容体刺激剤に入るアロテックの説明書などにも,これまではそうしたことは記されていなかった。これは理由のあることであって,Ahlq—uistのα,β受容体説も,βブロック剤が発見されることによって,ようやく広く認められるようになった。しかもそれはこのβブロック剤が臨床に用いられるにつれて,この仮設を用いることが説明に便利であるからであって,このα,β受容体説はまだ完全にその存在が認められたわけではなく,受容体をα,β,γ,δなどに分けている人もあるし,この仮設を認めない人も少なくない。またたとえ認めたとしても,あくまでも薬理学上の仮設としてであって,その本体はいぜんとして未解決のままである。
しかしAriens2)〜4)やBelleau5)らは,このα,β受容体とnoradrenalineなどのカテコールアミンの構造式との関係を,薬理学上の立場から検討し,"分子薬理学"やCibaのSymposium on Adrenergic Mech—anismにおいて詳細な研究を発表していることは衆知のことである。わが国においてはカテコールアミンの代謝については,多くのすぐれた業績があるが,この方面についての研究は少ない。私たちは昨年,化学構造式とα,β受容体刺激との関係を綜説としてまとめ6),さらにisopropylamino基をもつものについて,イヌで血圧,心指数を中心に実験し,構造式とα,β受容体との関係について,Ariensらの考え方に批判を加えた7)けれども,まだ受容体そのものについての研究に入ったわけではない。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.