巻頭言
左房粘液腫の診断
橋場 邦武
1
1長崎大学医学部第三内科学教室
pp.459
発行日 1972年6月15日
Published Date 1972/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202384
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左房粘液腫はかなり稀な疾患ではあるが手術によって根治しうる疾患である。鷲尾ら1)は1970年に本邦例34例をあげている。その約3/4が左房粘液腫であるが,剖検例を含めても1960年以後の症例が多いので,本症が必ずしも稀有の疾患ではないという印象を受ける。われわれはこの4年間に3例を経験した2)3)ので本症の診断についていささか述べてみたい。
本症の症例報告を読むと現在でも本症の診断が容易ではない例の多いことが知られる。それは本症が稀な疾患で念頭にのぼり難いことにもよると思われるが,また,本症の臨床所見や症状が多様で,時には心疾患以外の疾患のような様相が前面に出ている例もあるからである。われわれの1例は僧帽弁狭窄症と考えていた例,他の1例は僧帽弁閉鎖不全症であるがリウマチ性とは考えにくいために腱索断裂による閉鎖不全を疑った例で,ともに左房からの造影ではじあて本症と診断した。第3の例は発熱,全身倦怠,関節痛,体重減少などが主訴で入院し,血沈促進,γグロブリン高値のなどのために膠原病なども疑われた症例であったが,後述の心音図や心尖拍動図の所見から本症と診断しえた症例である。3例とも左房粘液腫の診断で外科に送ることはできたが,心カテ,アンギオの前に診断できたのが3例中1例のみであったことは内科医としては心残りであった。
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