巻頭言
「呼吸と循環」のあゆみ
小林 太刀夫
1
1東京大学医学部第4内科
pp.3
発行日 1968年1月15日
Published Date 1968/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201855
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「呼吸と循環」の発刊にさいし,当時の血気盛んなものども相かたり,大いに本誌のあり方を論じた。本年で第16巻に入ること故,発刊は1953年(昭和28年)となる。当時の情勢を懐古してみるのもまた一興と考え,あえて筆をとる。まだ昔を語る程の年でもないが,たまたま編集者の一人に加わった関係上おゆるしをねがいたい。
当時pulmonary functionに関する研究なり検査法なりが,どの程度であったかはいずれ別に述べられると思う故,小生はhemodynamicsの方について記述することとする。人体でhemo—dynamicsの基礎が研究されたのは1929年For—ssmannによることは周知であるが,その実用化の初めは1941年Cournand & RangesのFickの原理を応用したcardiac outの測定によることもよく知られている。この方法はドイツで早くから試みられたが,普及するに至らずCournandがフランスで試みようとして,許可を得られず,U.S.にわたり,コロンビア大学でRichardsの下で本格的に始めたのが右心カテーテル法である。当時のRichards一派の研究はまだ人体で暗黒であった肺循環系について新たな曙光を与えたのみならず,諸種心疾患の診断に新しい手段を提供した。
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