巻頭言
低圧実験と呼吸運動の記録
高木 健太郎
1
1名古屋大学医学部第1生理学教室
pp.407
発行日 1965年6月15日
Published Date 1965/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201453
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この頃IBM(International Biological Program)の研究の一環として再び低圧室での人体実験を進めることになった。人体の低圧馴化とその機序ということが目的である。馴化したかどうかは相手が人間だから,大体のことは本人の自覚症状や問診や態度の観察からわかるのであるが,馴化程度の数量的表現が要求されるので,いろいろな生体現象を記録しなければならなくなる。しかも人体の低圧実験となると,被験者にも相当の苦痛と障害を与えることになるので,実験回数はできるだけ少なく,時間も必要最小に止めたいので,一回の実験でできるだけ多くのデータを正確にとることが要望される。
前にもどこかに書いたことがあるが,このような研究で一番困ることは何をはかったらよいかということである。homeostasisの原理にしたがって内部環境を一定にするためにすべての生体反応が行なわれているということであれば,血液なり体液の性質を基準にして,それを一定にするために,どの器官がどのように動いているかをみればよいのであるが,低圧環境の下では体液そのものが動くので,基準とすべきものがない,いきおい手当り次第になんでも記録できるものは記録し,測定できるものはすべて測定して,あとでじっくりと考えてみるという方法をとらざるを得ない。
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