シンポジウム 脊髄損傷
低圧下における脊髄損傷患者の生理
冨田 忠良
1
,
今井 銀四郎
2
1国立箱根療養所
2国立箱根療養所整形外科
pp.35-47
発行日 1967年1月25日
Published Date 1967/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904178
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
人体が高空に上昇したり高地に登つたりすると,高度と滞留時間によりHypoxiaをきたす.酸素吸入等の処置をほどこさずに外気を呼吸した場合,sea levelより標高約3,000mまでは動脈血の酸素飽和度は90〜95%に保持され,一般には人体に著しい変化をきたさないが,3,000m〜5,000mでは主として呼吸,循環の機能が亢進して,生理的な限界内で酸素不足に対する代償機転がはたらくとされている.これ以上の高度では普通Hypoxiaが発現する。しかしHypoxiaの発現とその程度は単に高度(外気の酸素分圧)の変化のみによるものではなく,上昇速度,滞留時間,気温,気湿,筋運動の程度などが影響し,さらに個人の体質や健康状態,精神状態,馴化の有無なども大きく影響する.たとえば2,500m程度の低高度では健康人が安静を保つている限り,比較的短時間ではHypoxiaの症状はあらわれないのが普通であるが,馴化が完成しない時期にここで安静時代謝の数倍以上もの筋運動を長時間行なうというような場合には,生体内酸素不足は著しくなり,Hypoxiaが発現してくる.
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.