Japanese
English
特集 肺循環(2)外科領域
術後肺水腫
Edema of the Lungs after Operation.
脇坂 順一
1
Junichi Wakizaka
1
1久留米大学医学部外科学教室
1Dept. of Surgery, School of Medicine, Kurume University.
pp.133-148
発行日 1963年2月15日
Published Date 1963/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201181
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I.はじめに
Laennecは1834年肺水腫を次のように定義した。即ち「肺水腫とは肺組織内に血清が異常に貯溜し,そのために肺胞作用が低下している状態である」と。
所謂肺胞のガス交換は,肺胞上皮細胞と肺毛細血管内皮細胞よりなる,僅か0.5〜2μ前後の極めて薄い構造を介して行なわれているのである。そのため肺胞並びにこれらの構造の中に液体が貯溜したり,若しくは貯溜液によつてこれらの構造が破壊された場合,生体のガス交換は極めて高度に障害されることは論を俟たない。尚,これら脈管外に濾出した液体は,初期の頃は肺のリンパ系や,静脈系から再び脈管内へと吸収されて行くのであるが,漸次この状態が進行し,代償能力の限界に達すると,気管支系を経て体外に排出されるようになる。即ち,この時期になると,気管支,肺胞系ともに水腫液によつて充満され,呼吸困難,チアノーゼ,喘鳴,胸部湿性ラ音,泡沫性血性喀痰などのいわゆる典型的肺水腫の像を呈して来るのである。
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