巻頭言
独創的研究について
山川 邦夫
1
1順天堂大学
pp.303
発行日 1962年5月15日
Published Date 1962/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201088
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先日,生体の科学14巻5号にかゝれた東京医科歯科大学の生化学,阿南博士の,「独創的研究とは何か」と題された御意見を,極めて興味深く拝読しました。そして感じましたことは,日頃,私自身が心苦しくおもつていることをずばりと御指摘になつておられるので,さすがだと思つた次第です。生化学の先生が感じられる以上に,私共内科の関連している学会の数,そして発表される論文数は,天文学的数字であります。是非,阿南博士のいわれるような独創的研究があらわれて,突破口をつくる努力が常になされねばなりません。この為には,生命現象なる多次元の事象に今迄と違つた座標軸を設定する努力がなされねばならないとおもいます。その一つに,方法論の進歩があげられるとおもいます。本当をいつて理想的な偉大な人は方法論を主に追求して,新しい路をひらいていく。あとは,他の人々がその路からその奥深くを極める。その超人は他の突破口にむかつて,新に路をつくり,一般の人々が,データをつみ上げる。こんな超人的な方は出ないでしようか。Ehrlichなどは一見彼は多方面をつつきまわしたかもしれませんが,常に最先端を進んだ人であつたといえましよう。もう一つ同じようなことですがHeisenbergやdu Brogliにみるように,光を粒子とみたり,波動とみたり,M.Planckのように,不連続な量といつた,従来の概念を打破するような大胆な仮説をおくことです。
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