巻頭
生字引と独創
守山 英雄
1
1湘南衞生研究所
pp.1
発行日 1955年8月15日
Published Date 1955/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905839
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近頃の知名国立大学の入試問題はいかにもむずかしい。今筆者がかりに入試に応じたとしたらとても入れる見こみはない。筆者が学校を出てから30年近くも直接あるいは間接にそれに関係してきた生物や化学の問題すらも,半分ぐらいしかできそうもない。
多年専門に勉強してきた男が,それがいかに鈍才であるにせよ,完全には解き得ないような難問を解いて,あつぱれ入学の栄冠をかち得る近頃の若人のいかに恐るべき存在であることか,かような博覧強記の生字引的の秀才が今後の日本を背負つて立つことになるであろうことは,まことによろこぶべきことではある。──といゝ度いが,少くとも自然科学者としての立場から,それが果して手放しに喜んでいいかどうかには疑問がある。
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