巻頭言
麻酔学のPhilosophy
天野 道之助
1
1慶応大学
pp.607
発行日 1961年9月15日
Published Date 1961/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201016
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十年一昔というが,近代麻酔学がはいつて来たのが一昔前になる。顧みて驚くばかりの発達である。恐らくこれ程の変化を遂げた領域は医学全分野を通じても例に乏しい位であろう。最近では先進国にくらべて遜色のない業績を挙げるまでに発展して来た。わが国の医学者が優秀で勤勉であることを立証するものである。
学問的にはこのように進歩したとはいえ,考え方においてはどうであろうか。philosophyというものは,倫理とか医道と同じく,長い間の丈化的,社会的遺産に培かわれるもので,いわゆるacademicな事実のように一朝一夕で会得できないものかも知れない。戦後根を下したと思われた民主主義が近頃何となくあやふやに感じられるのも,そんな所にあるのではないか。
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