Japanese
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綜説
血管外科の10年の歩み—特に大動脈の外科について
Our vascular surgery in 10 years.
木本 誠二
1
Seiji Kimoto
1
1東京大学
1Dept. of Surgery, Tokyo Univ. school of Medicine.
pp.608-619
発行日 1961年9月15日
Published Date 1961/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201017
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I.序言
今年4月2日,仙台で開催された第61回日本外科学会総会の席上,私は教室の和田達雄博士と連名で「血管外科」の宿題を担当報告した。「血管外科」は外科学会として2度目の宿題であり,前回は昭和27年4月2日,京都で開かれた第52回総会で,まだ近代外科としての血管外科発達の初期であつた。その後満9年,私どもが当時広い意味でとり上げた血管外科は,その後血管外科,心臓外科,及び門脈外科に分れ,それぞれに関する各国の研究は急速に進歩して,実地臨床上広く普及されるに至つた。昭和27年に私と並んで宿題を担当された名大の戸田博教授は,その後間もなく故人となられたが,当時臨床的にはまだ遠い夢と考えられた教授の人工心肺に関する実験的研究は,今日では心臓外科に日常欠くべからざる方法として実を結んでいる。昭和27年は私が福田保教授の後任として教室をお預りした時であるが,始めから私の片腕として研究に従事した杉江三郎君は東京医大に転出し,今回私どもと並んで血管外科の宿題を担当した。私はこの9年間,或は私どもが本格的に臨床的に血管外科を開始してからの10年間の教室の歩みをふりかえつて見て,感慨無量である。
宿題報告の内容はそのまま日本外科学会雑誌に発表される筈であるから,ここにはこの機会に教室の研究の歩みを回顧し,併せて血管外科の現況を簡単に記述して見たいと思う。
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